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自民党の議席減を鈍らせる、国民民主党内の「小沢一郎アレルギー」
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2019.04.19 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース 夏の参院選に向け、慌ただしさに包まれる各政党。12年に一度、地方統一戦と参院選が重なる「亥年選挙」は自民党が苦戦を強いられると伝えられますが、安倍政権を追い詰めるはずの野党統一候補の一本化が進んでいません。その理由はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で元全国紙社会部記者の新 恭さんがその背景を分析しています。 自民党が議席減に慄くなか、進まぬ参院選野党候補の一本化 今夏の参議院選挙。焦点は何かと問われたら、自民党がどこまで議席を減らすかだと、答えよう。 いうまでもない。前回の2013年は、アベノミクス幻想のもたらす期待感で、自民党が34から65へ、実に31も議席を増やす異常な選挙結果だったからだ。 いくら内閣支持率が安定し、野党勢力が弱体だといっても、よほどの追い風が吹かない限り、確実に自民党は議席を減らすだろう。 風を呼ぶには、改元の祝賀ムードを演出したり、5年後の新札発行を早々と発表するくらではこと足りない。 減り方によっては、安倍首相が熱望してやまない憲法改正の発議に必要な議席数、すなわち「衆参とも3分の2」を確保できないことになる。 このため、永田町界隈では、安倍官邸が消費増税延期どころか「消費減税」の秘策を練っているのではないかという噂さえもささやかれはじめた。 裏を返せば、それほどに安倍政権は危機感を抱いているということだ。二階幹事長に気を遣って、いくら失言を重ねても桜田五輪担当相を庇ってきた安倍首相、菅官房長官が、タイミングを見計らっていたかのように、同僚議員のパーティーでの失言からわずか2時間後に辞任させたのもその表れといえよう。 発言中の「復興以上に大事なのは、高橋さん」という部分について、「これまでの失言とは次元が違う」「一発アウト」と言っているのは与党関係者であって、野党ではない。野党は「辞任が遅すぎる」と指摘している。 選挙の年の花の季節に、塚田一郎国交副大臣、桜田五輪相と続いた辞任劇。このあとも、片山さつき地方創生担当相ら、“辞任ドミノ”の予備軍にはこと欠かない。 こうした政治状況のなかで、気になるのは野党共闘の行方だ。野党が乱立せずにまとまれば、はるかに安倍政権批判票が集まりやすくなる。 森友、加計問題や統計不正などで露わになった権力の私物化、公文書改ざん、事実の隠ぺいなど、アンフェアな安倍政権の体質にうんざりしていても、その思いをどのような投票行動につなげればいいかがわからず、投票所に足を運ぶ気にならない有権者は多いはずだ。なのに、遅々として野党共闘の話し合いは進まない。 32の1人区全てで候補一本化が実現した2016年参院選の再現をめざす点では一致している。 無所属の統一候補を立てることで合意したのはいまのところ愛媛、熊本、沖縄の3選挙区だけだ。被災地をかかえ野党有利とみられる東北6県でも、山形、青森、宮城は野党統一候補の擁立をめざしながら候補者が見つからない状況が続いている。 だが、統一地方選後には、話し合いがスピードアップするだろう。滋賀では、立憲と国民が嘉田由紀子・元滋賀県知事を統一候補として擁立することで合意、共産と社民も同意する方向のようだ。 共産党との調整を残すだけになっている選挙区も多い。 秋田では立憲、国民、社民が寺田学衆院議員の妻、静氏を擁立することを決めた。福島は、国民民主党の県議、水野さち子氏を国民、立憲、社民が統一候補として擁立する。 三重では、国民と立憲が、地域政党「三重民主連合」の擁立する県議、芳野正英氏の推薦を決めている。岐阜も、立憲の候補を国民が支援する方向だ。 今夏の参院選では、共産党の姿勢が一つのポイントになっている。 共産党がほとんどの1人区で擁立を撤回した16年と違い「相互支援・相互推薦をし、一定の選挙区では共産の候補を立てるべきだ」(小池晃書記局長)と一本化のハードルを上げているのだ。 同党のホームページには、32の1人区のうち24選挙区で独自の立候補予定者が紹介されている。 もう一つのポイントは小沢一郎氏(自由党)の動きだ。国民民主党との合流話は壁にぶち当たっている。 玉木代表は低支持率にあえぐ党の存亡をかけて、豊富な資金と地方組織を生かせる戦略家、小沢氏の力を借りたいのだが、党内には民主党政権以来の小沢アレルギーがくすぶっている。 それが参院選の候補者擁立で表面化した。小沢氏の地元、岩手県選挙区。自由党が主導し共産、社民の賛同をとりつけて元パラリンピック選手、横沢高徳氏を統一候補として擁立しようとしたが、当の国民民主党から「待った」がかかった。 国民民主党における反小沢の急先鋒、階猛衆院議員が県連の推す黄川田徹元衆院議員の擁立を強く求めたため、玉木代表は候補の白紙化を含めた再協議を小沢氏に要請した。小沢氏は再協議を受け入れたが、共産、社民は難色を示している。 小沢氏のねらいは、保守、中道、リベラルの野党連合が共産党と選挙協力することによって、安倍政権批判票の大きなうねりを呼び込むことにある。 立憲民主党が国民民主党と一定の距離を保ちたい理由もわかる。両党には共産党との連携に反対するグループがいるのもわかる。しかし、さまざまな垣根を超えて、小沢氏の言う「オリーブの木」のような、ゆるやかな野党連合体をつくり、自公に対抗すれば、明確な対立軸を有権者に示すことができる。 一気に、参院選でそのような形をつくるのは難しいかもしれないが、少しずつ前進しなければ、弱体野党が傲慢与党をますますのさばらせてしまう。 その意味で、21日に投開票が行われる二つの衆議院補選を、野党共闘の試金石として注目したい。沖縄3区と大阪12区の補選だ。 昨年の県知事選と同じ「オール沖縄」vs自公維新の構図になる沖縄3区は野党優勢が伝えられている。 問題は大阪12区だ。共産党の宮本岳志氏(比例近畿ブロック)が現職の衆院議員を辞めて、無所属で出馬した。かつてなかったことだ。 志位和夫委員長は各野党を回り、宮本氏を野党統一候補として支援するよう要請。自由党が宮本氏の推薦を決めた。 立憲民主党、国民民主党は自主投票の方針だが、森友疑惑の追及で宮本氏と連携してきた立憲民主党や社民党の議員らも宮本氏の応援に駆けつけている。立憲の枝野幸男代表も宮本陣営を訪ね激励した。 この選挙では自民党新人の北川晋平氏、日本維新の会新人の藤田文武氏、無所属の元衆院議員、樽床伸二氏も出馬しており、維新の藤田氏の優勢が伝えられている。 樽床氏にも野党票が入ることが予想されるだけに、宮本氏は厳しい戦いとなっているが、終盤の追い上げにのぞみをかけたいところだ。 いずれにせよ、自民党は沖縄3区と大阪12区の衆院補選で敗れる公算が大きい。環境庁長官を務めた北川石松氏の地盤を引き継ぐ北川晋平氏が大阪で敗れることになると、参院選を間近に控えて気勢がそがれるだろう。 自民党が難攻不落なのではない。野党結集が足りないのである。民主党政権誕生時の選挙協力で強まった小沢氏と共産党の信頼関係を、立憲民主、国民民主両党は生かすべきである。 image by: Shutterstock.com 新恭(あらたきょう) この著者の記事一覧 記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。
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